中山さんは歌がじょうず、大きなよく通る声で歌を歌う。
わたしは中山さんの歌を聴いて、ちょっとだけだけど歌を覚えた。
中山さんの歌はだいすき。
そんな中山さんは、夕方が近くなるとよく「おねがい」をする。
今日もわたし、中山さんに「おねがい」された。
「おねーさん!ねっおねがい!」
大きな元気な声で中山さんがわたしを見て言う。
「どうしたの〜中山さん」
「おねーさん、わたしね、うち帰りたいのっ」
中山さんも、おうちに帰りたいってよく言う。これが中山さんの「おねがい」。
「中山さんのおうちはどこなんですか?」
「○○区△△町!おねえさんはどこなの?」
これでちょっとは気がそれてくれるかな?他のお話ししてくれるかな?って思いながらわたしは自分のおうちを答えた。
「あんたなにいってんのっ!!!!!」
中山さん大爆発。こわあい顔して、おっきな声で怒鳴る。
わたしはまだ、中山さんがなにに対して怒っているのか、よくわからない。
よく学校で聞いた、「点の上でいきてる」ってことなのかなあ。
でもそれとはなんかちがうような気もするなあ。
もしかしたらわたしが、中山さんの欲しかった答えじゃないこと言ったのかなあ。
どうやったら中山さんは笑ってくれるかな。
今日は夕方からずうっと、そのことばっかり考えてます。
中山さんや飯田さんがおうちに帰りたい!って気持ちをストレートにこっちに伝えてくる。
何年ここで過ごしても、中山さんと飯田さんのおうちはここじゃなくて、今までずっとくらしてきたおうちが、家なんだなあ。
わたしの施設は、ユニットケアをやっていて、家庭的な雰囲気をーとみんな考えてる。
でも職員足りなくて、結局細かいところまで手が届かない。
みんなで昼間フロアで過ごして、夜だけ自分のお部屋でねる。まっしろなシーツ、まっしろなまくら、鉄の柵、茶色いタンス、みんなおなじ、みんなとおなじ。でもみんなはここではじめてあったひと、家族じゃないし、お友達ともちょっとちがう。ご近所さん?
ここは中山さんや飯田さんの「家」になれないのかなあ。
家族が帰ってくる場所が、家なんだよね、やっぱり。
わたしたちは家族になれない。家族みたいに毎日一緒にいても、家族とは違う。友達とも違う。
わたしたちは、中山さんにとって、誰なんだろう。誰になれるんだろう。
わたしはいっつも、「家に帰りたい」って訴えられたとき、どうすればいいのかわからなくなる。
「もうすこしでご飯できるの、あなたの分も用意しちゃったから、もったいないからそれは食べていってね、ごちそうするからね」
そのくらいしか言えない。
「いいよ、帰りましょう!」
っていうのは、無責任だとおもっちゃうから。
出来もしないのに、相手が認知症できっと忘れちゃうだろうからっていって、無責任なことは言いたくない。
そうもいってられないのかな?
いいよ、帰りましょうっていって、その人がそれで落ち着いて安心して過ごせるんなら、そっちのほうがいいのかな。
わたしにはまだよくわからない。
華之将
>中山さんがなにに対して怒っているのか、よくわからない。
認知症の典型的な会話ですね。ブログでは本当の事は判りません。
しかし、認知症の典型で短期記憶は忘れるが長期記憶は残っている
…介護福祉士試験勉強でよく出ましたね
>中山さんや飯田さんがおうちに帰りたい!
…家が懐かしいのでは無く今でもそこが自分の家なのでしょう。
何年過ごしても同じ…もっと酷くなるかもしれませんね。
>ユニットケアをやっていて、家庭的な雰囲気をーとみんな考えてる。
そうですね。みんな頑張っているね。…
しかし、認知があってもその場の反応には意味があります。
正しい判断ができます。(一般論ですが)
…認知と馬鹿にせず対応する…良いことだと思います。
>でも職員足りなくて、結局細かいところまで手が届かない。
これも悩みだね。…どこの介護現場でも同じに悩んでいる。
>「家に帰りたい」って訴え…どうすれば…
嘘も方便「嘘は罪悪ではあるが、よい結果を得る手段として時には必要であるということ。」
ですが、時には悪意の無い嘘は大切です。…認知症を馬鹿にするのではなく!
実際に嘘は日常ついていませんか。
ターミナルケアでやつれたお客様に…お逢いするとき
「今日はお元気そうですね…顔色もよく」なんて
まさか…「今日も具合悪そうですね、今にも死にそう」なんて言わないよね。
認知症に限らず相手に共感し、心を理解するように努力すれが結果は仕方がないこと
介護の仕事にパーフェクトはありません。よりベターな仕事を目指したら?
http://happy.ap.teacup.com/hananosyou/1.html
2008/05/17(土) 20:51:13 | URL | [編集]